みんなで食べられる幸せ”を形に「everyone」が描く、やさしいスイーツと未来

「地球と自分にもっとも優しい」暮らしを実現するために、さまざまな「フリーフロム」に取り組む人々 “フリーフロマー” がいます。

今回は、そんなフリーフロマーの一人、山内健司さんにお話を伺いました。

アレルゲンや添加物といった「食の制限」は、時に日常を不自由にすることがあります。けれど、その制限を“可能性”に変える選択肢があるとしたら?京都・東山からそんなやさしい未来を届けているのが、フリーフロムスイーツブランド「everyone」です。

「everyone」は、グルテン・卵・乳製品などを使わず、アレルギーのある方でも安心して食べられる焼き菓子・スイーツを手作りで提供しているブランド。自社工房では小麦を一切使用せず、シンプルでやさしい素材を大切にしながら、丁寧なものづくりが行われています。現在は、オンライン販売やOEM、卸販売を通じて、その活動の輪を少しずつ全国に広げています。

一緒に食べられる”幸せを形に─京都発のフリーフロムスイーツブランド「everyone」

京都・東山に工房を構える「エヌアンドエムドーナツ株式会社(ブランド名:everyone)」は、グルテン・卵・乳製品不使用といったアレルゲンフリーやフリーフロム素材にこだわった焼き菓子・スイーツを製造・販売しているブランドです。その背景には、創業者である山内健司(やまうち けんじ)さんの、ある切実な想いがありました。

アレルゲン対応から、未来を見据えたお菓子づくりへ

“はじまりは、息子のアレルギー”

ブランドの創業者・山内健司さんがこの道に進んだのは、息子さんが卵アレルギーだったことがきっかけでした。

「誰もが“安心して一緒に食べられる”おやつを作りたい」そんな思いから、最初に立ち上げたのがアレルギー対応のドーナツ店「ニコット&マム」。そこから進化を遂げ、地球や未来にもやさしい“フリーフロム”を軸にした新たなブランド「everyone」が誕生しました。

限られた素材の中で「美味しさ」を追い求めて

素材に制限がある中で、何よりも難しかったのは“美味しさ”との両立でした。

「原材料の選択肢が少ない分、どうすれば納得のいく味になるのか、ずっと試行錯誤してきました。原価が高くなることや、思いがなかなか伝わらないもどかしさもありましたが、それでもやる価値があると信じています」

だからこそ、「このお菓子なら子どもも一緒に食べられる」「安心して贈り物にできる」といったお客様の声が、何よりの原動力になっているそうです。

「フリーフロム」は、我慢ではなく、可能性

「everyone」が目指すのは、“制限”ではなく“選択肢の拡張”です。

「フリーフロムは、我慢や制限ではなく、新しいアイデアや創造性を引き出すチャンスです。アレルギーがあるからこそ、そこから生まれる工夫で、より多くの人に届くお菓子が作れる。そんな希望を届けたいと思っています」

現在、ブランドが取り入れているフリーフロムのポリシーは以下の通りです:

グルテンフリー

エッグフリー(卵不使用)

デイリーフリー(乳製品不使用)

ピーナッツフリー

アニマルフリー(※一部アイテムはヴィーガン対応)

無添加(できる限りシンプルな素材)

フードロスフリー(アップサイクル素材の活用)

食の選択が、ライフスタイルと地球を変える

活動を続ける中で、山内さんの食に対する意識も大きく変わったといいます。

「“何を選ぶか”という視点を持つことで、自分や家族だけでなく、地球にも影響を与えるという実感を持つようになりました」食べることは、自分の生き方そのものに直結している。そう実感するようになった今、自身のライフスタイルにも“選ぶ目”を大切にしているそうです。

身近なところから、フリーフロムを知る一歩を

「everyone」の取り組みに共感しても、何から始めればいいか分からない人も多いはず。そんな人に向けて、山内さんはこう語ります。「まずは“原材料のラベルを見ること”から始めてみてください。“これは何でできているんだろう?”と考えることが習慣になれば、自然と選ぶ視点が変わってくるはずです」

小さな気づきが、大きな行動の第一歩になります。

今や“フリーフロム”はアレルゲン対応の枠を越え、地球環境や健康志向といった広い視野で語られるようになってきました。「everyone」のお菓子は、その潮流の中で、やさしく、力強く、未来を形作っていく存在です。

「“一緒に食べられる”ことが、当たり前の社会へ。そのお菓子の先に、みんなが安心して笑い合える未来があると、僕たちは信じています」

活動リンク
URL: https://freefrom.jp/

編集後記

「制限」という言葉には、どこかネガティブな響きがある。でも、「everyone」のお菓子に出会って思い知らされたのは、その“制限”の中にこそ、思いやりや創造性が宿るということです。

息子さんのアレルギーをきっかけにスタートした山内さんの挑戦は、単にアレルゲンに配慮したおやつを作ることではなく、「誰もが一緒にいられる時間」をつくることだったのだと思います。

ひとつひとつの素材と真剣に向き合いながら、安心と美味しさの両立を目指す姿勢。その先にあるのは、食べられる・食べられないという線引きを超えて、誰もがテーブルを囲み、笑い合える風景です。

フリーフロムという考え方は、アレルギーやライフスタイルの違いを「分断」ではなく「接点」に変えてくれる。そんな未来へのヒントを、「everyone」はお菓子という小さなかたちで私たちに示してくれています。

次に誰かにおやつを贈るとき、あるいは何かを選ぶとき、ふとその「やさしい選択」を思い出してもらえたら嬉しいです。